胃腸の弱い人の下痢に啓脾湯(けいひとう)
啓脾湯(けいひとう)は胃腸の弱い人の下痢によく使われる漢方薬です。
処方のポイント
消化器を補強する四君子湯を中心に、消化力を補助する山查子、陳皮、山薬と下痢に有効な蓮肉、沢瀉で構成されます。
消化器系がもともと弱い人の下痢などに適応します。
酸味のある甘味で、温服が効果的です。
目次
啓脾湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
痩せ型で、顔色が悪く、食欲がなく、下痢の傾向があるものの次の諸症:胃腸虚弱、慢性胃腸炎、消化不良、下痢。
漢方的適応病態
脾胃気虚の下痢。すなわち、軟便、水様便あるいは不消化下痢の明らかなもの。
啓脾湯の組成や効能について
組成
人参3 白朮3 茯苓3 山薬3 蓮子肉3 山楂子1.5 陳皮1.5 沢瀉1.5 炙甘草1.5
効能
健脾益胃・消食止瀉
主治
脾胃虚弱・食積下痢
◎消食止瀉:停滞している食物を消化し、下痢を止める治法です。
解説
啓脾湯は小児の泄瀉に用いる処方です。
脾胃の虚弱を補いながら、食べ過ぎによる胃のもたれと下痢の症状を改善する効能があります。
適応症状
◇食欲不振
脾胃の虚弱による運化機能の減退を示す症状です。
◇顔面萎黄
顔色につやがないことをいい、脾胃の虚弱により気血の生成が不足していることを示唆します。
◇悪心・嘔吐
胃の降濁機能が失調し、胃気が上逆すると悪心嘔吐が出現します。
食物が停滞すると諸症状が悪化します。
◇腹脹・腹痛
食物の停滞が気の巡りを阻害し、「不通則痛」で腹脹や腹痛が現れます。
◇下痢
湿濁の停滞と脾の昇清機能失調によって下痢が現われます。
◇舌淡
脾胃の気虚を示す舌象です。
◇苔膩
食物の停滞により、汚れた膩苔がみられます。
◇脈細弱
脾胃の気虚を示す脈象です。
啓脾湯は健脾薬を中心に組成されています。
人参は健脾益気の作用を有し、啓脾湯の主薬です。
山薬と蓮子肉は渋味があり、収斂作用によって慢性の下痢を止めます。
白朮と茯苓は中焦の水湿を取り除き、嘔吐下痢などの症状を緩和させ、山楂子は消化薬で主に肉食の消化を助け、食積による腹脹、腹痛に効果があります。
陳皮は理気作用をもち、腹脹の治療に役立ちます。
また芳香性が強く、山楂子と協調して食欲を増進効果があります。
沢瀉は利水薬で体内の水湿を尿にかえて排泄し、下痢の症状を緩和できます。
清熱作用を兼ねているので、食積による熱を計ることもできるでしょう。
臨床応用
◇脾胃虚弱証
虚弱な脾胃を穏やかに補うことができます。
慢性胃腸炎や慢性の下痢などに広く使用され、病後の体力回復にも用いられます。
◇食欲不振
啓脾湯には、消導薬が配合されているので、脾胃虚弱による食欲不振の改善に用います。
術後や病後の食欲回復の調節にも効能があります。
◇下痢
健脾渗湿の白朮、茯苓、蓮子肉、山薬が配合されているので、脾虚湿盛の下痢に適します。
健脾薬と消導薬の配合があるので、疲労感食欲不振をともなうときに使いやすいででしょう。
◇疳積
「疳積」は虚弱な小児によくみられる病証です。
顔色が黄色い、瘦せ、腹部の膨張手の指をしゃぶる、異食を好む、下痢などの症状がみられるときには本方を優先して使用します。
啓脾湯には消食作用のある山楂子が配合されているので「疳積」に限らず一般的な消化不良にも用いられます。


